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 取材掲載記事



『華道 4月号』 (2020年)  発行:日本華道社








器との対話[望月集の器]   外舘和子(工芸評論家・多摩美術大学教授)


 2019年、第66回日本伝統工芸展で日本工芸会総裁賞を受賞した望月集の《花文大鉢「椿」》(写真①)。器の内外をぐるりと覆うように配された赤い椿の花、葉や枝。少しずつ角度を変えて見れば、刻々と椿の景色も変化していきます。どの角度から見ても内と外のバランスの取れた模様の配置は、作者が器の側面360度に対応する横長の図案を準備して模様を配したことによります。
 また、器の外側の面に注目すると、赤い椿は最も手前、長石釉の白い葉や枝の上に描かれ、鉄分が発色した黒い部分はわずかに奥まっています。器の表面には視覚的な奥行きとともに物理的な段差も生じているのです。作者はこの器の制作において、信楽と美濃の土を調合した土で轍櫨成形した後、液状ゴムで黒い部分をマスキングしてから白い釉薬をかけ、その後ゴムを剥がして焼成することで、実質的な奥行きを生み出しました。
 さらに、白い部分と黒い部分とは、時折、葉や枝と背景とが錯綜し、ある部分では黒が背景に見えていながら別の部分では葉や枝を示すなど、黒と白、図と地の関係が逆転するような面白さもあります。2020年、第7回陶美展に入選した《花文角鉢「椿」》(写真②)を見ると、その様子がわかりやすいでしょう。
 作者の望月集は、1960年、後に東京藝術大学で環境造形デザインの教授となる望月積の長男として東京都に生まれました。東京藝術大学の工芸科で陶芸を選び、当時の教授の一人、陶芸家・浅野陽の指導を受け、生活に密着した浅野風の絵のある器を制作していきます。
 しかし、藝大の非常勤講師を辞め、都内の方南町に「陶芸工房一閑」を築き独立した1994年ごろから、より自分らしい世界を探究するようになります。2000年、伊豆高原にもう一つの仕事場を築いたのは、近隣を気にせず東京よりも自由に制作できることに加え、作品のモチーフとなる自然が豊富だからです。
 作家はこれまで、椿の他にも梅、桜、牡丹、蓮、紅葉、松など、四季折々の植物の美しさをスケッチし、器に描いてきました(写真③④)。写生をもとにしながら何をクローズアップするか、あるいは省略するか、作家は随時工夫しています。実際の風景のようでいて、器形に即して模様化されている ― 日本には「絵模様」という言葉がありますが、望月氏の作品はまさに絵と模様の要素を併せ持つ表現となっています。




 
  今までを通しての仕事の展開を取り上げて頂きました。とてもありがたいことです。外舘さんは長年の付き合いの中、いろんな多くの作家仕事を分け隔てなく興味津々取材される方だと思っており、その方の僕を評する目を楽しみに読まさせて頂きました。紹介されたいる分の中で父の名前まで出てくるのは初めての事で驚きましたが、確かにそのデザイナーの家庭で育ち僕の様な陶芸作家がいるのですから必要な事なのかもしれません。「絵紋様」と言う言葉から只の具象絵付けとしてだけで無くとらえて頂いたのだと制作の中でのこだわりが伝わった様な気がして嬉しかったです。




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