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 取材掲載記事



『やきもの和食器百科』 (1992年)  発行:主婦と生活社

 

 

 


 耳を澄ませば星のささやく声も聞こえると思う心を大切にしたい 

 
望月さんの器には、よくススキの文様が施されていることに気がつきます。
 それも年を経て少しずつ、そのススキの表現が変わる道程をきちんと見ることができるほど、望月さんは数年にわたりススキにこだわってきたのでした。最近描いたススキは、ロウ抜きと呼ばれる手法を使って、ススキを描いた大皿でした。太い筆で勢いをつけてススキを思い切り描いたのでしょう。ススキは強い横風にあおられたかのように、ざわめいていました。
 「ススキと単にかたずけないでくださいね。僕のススキは、富士山の裾野にある、広々とした草原の中のススキです。その表情にずっとこだわト続けて、その結果を食器に写していこうと思っているのです」
 自分の中に、何かしっかりしたテーマをもって食器作りをしていこうということは、誰にも左右されないオリジナリティーをもつということになります。
 ススキの文様は望月集の器″と言われるほどのところまでいきたいと語ってくれました。でも、なぜ、富士山の裾野のススキなのでしょうか。
 
「ほんの偶然なのですが、ちょうど関東地方のほうへ台風が接近してくる時だったと思います。低気圧の間みたいなエアポケットの状態の時に、富士山の裾野に広がるススキが原に居合わせたのです。金色に輝く光が少しずつススキが原をなめていくと、うなだれているススキの穂先がその金色の中に浮かび上がったのです。強い凪が渡るたびに、うねりが生まれます。うねりは金色に輝くススキのうねりとなって、自分のほうへ押し寄せてくるようだった。この世のものとは思えない光景とはこういうことをいうのだと感動しきってしまいました。あの輝きを自分のやきものの中に写し出すことができたら最高ですね。だから、富士山の裾野でなければいけないんです」
 望月さんのススキの器は、少しずつ使う側の人たちにも理解されてきているらしく、「こんどのススキはどちらのススキですか」とたずねる方もいるそうです。
 望月さんの土ものの器について、そのバリエーションの豊富さを高く評価するプロの料理人も数多くいます。そして、そこで使われるモチーフは、ススキと同じょうに、自然がある一瞬垣間見せるフォルムの美しさを、望月さんの感性で受け止め形づくられるのです。
 
蓮の花の皿をとってみても充分その良さは納得できると思います。一枚は蓮の菅。二枚目はやや花くびをもたげふっくらと花びらが開き始める。そして、三枚目は見事に咲きほこった蓮の花。直径およそ24センチの丸皿の世界に、宇宙そのものが息づいているといえるでしょう。
 「蓮の花びらが開く時、ポンとなるのをご存知ですか。その一時を皿に盛りたかったのです。」
 幸多い食器が若々しい手から生まれ出てくるのです。



 初めて取材を受けた、とても懐かしい本です。自分の思ってる事を人に伝えるのは、難しいなぁと、改めて感じたのもこの取材の時でした。何しろ「蓮の花が開く時は本当に音がするのですか}と質問をされ「音は聴いたことないですね。音がするかのごとく咲き開くという事ではないでしょうか」と答えたつもりだったのですが、こういう文に。この後の取材は、できるだけ印刷になる前にチェックさせてもらうようになりました(笑)。
 



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