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別冊 炎芸術 『全国陶芸学校施設ガイド』 (2001年)  発行:阿部出版

 

「陶芸家になりたい!」
そんな 陶芸を本格的に始めたい人へ


この本は、割合丁寧に、全国的に取材されています。

陶芸を本格的に勉強したいけれど、

どうしたらよいかわからない方には、
とても参考になるのではないでしょうか。


本文 第3部『弟子入り、その他』というところで、
私も取材されています。




第3部 弟子入り その他
 その他の方法で陶芸をはじめる


陶芸家のもとに弟子入りする

 
第3部には、大学のような陶芸の教育機関にもそれ以外の諸施設にも行かずに陶芸をはじめる方法を考えてみた。


 まず、思いつくのは作家に弟子入りすることである。かつては陶芸を学ぶといえばそれしか方法がなかったにも関わらず、現在ではそれが一般的な方法ではなく、いささか特珠な指導の形という印象を与えるのはなぜだろうか。もちろん窯業地では、現在でも住み込みからはじめるということは、決して珍しくはない。問題は都市部に住む作家と生徒志望の人である。今回、取材に応じてくれた望月集は次のように語った。

  「多分、普通の発想だと弟子をとったら、弟子を養わなければならないという意識が出てくる。最低限の生活費とか考えなければいけなくなりますね。そうすると今の時代は、きちんと受け入れて面倒みるのは、作家にとってすごく負担になると思います。僕の場合は勉強したかったら、わかってることはどんどん教えて上げるけど、生活の面倒までをみることはしません。」

  これは、現在作家活動をしている人が、自分を訪ねてくる後進の人に対して多少なりとも抱いている本音のように思われる。弟子入りを志望する人の圧倒的多数が、女性であることも影響しているかもしれないo

  「男性は生活がかかっていますから、僕としても迂闊なことは言えない」と望月は語る。「妻子ある男性が職を辞めて訪ねてきたことがあるのですが、僕の考え方では無理だと思って断りました。やきものを勉強するには、どうしても何年間か確実に打ち込まなければならない時間が必要なんです。繰り返しで覚えることが多いもので、技法書でできるわけではないんですね。なにかしら時間が確保できる人でないと」無理だというのである。

 作家の元で学ぶのは、他の方法にはない有意義な点が数多くあるが、弟子入りできる条件というのも限られてくるようだ。望月のもとに現在、弟子入りをしている有光志津江さんは、望月の主宰する陶芸工房「一閑」の生徒たちの窯詰めや窯出しなどを手伝いながら、週1回指導を受けている。このような作家の手伝いをするためにも、最低限の陶芸技術は身につけていなければならない。大学や陶芸教室など、どこかでこれらの基礎を学んでから作家の門を叩くというのが、現実的な選択ということになろう。



作家への弟子入り  望月 集

 
望月集は東京を離れたことがない作家である。東京生まれの東京育ち。陶芸も東京芸術大学で学んだ。 陶芸工房一閑を主宰するかたわら大学の講師も務める望月と、その下で修業する作家をめざす女性に、都会に暮らす陶芸家への弟子入り事情を聞いた。


 望月集は陶芸を習いたいと訪れる人のための教室を、東京・中野の工房で開催している。望月が工房一閑を築窯してから現在までの15年余に、門を叩いた作家志願者は5、6名にのぼる。きっかけは、知人の紹介や公募展の出品作を見て訪ねてくる人など様々だという。「弟子入りを希望する人には、ここが向いているかどうかわからないよ、と最初に伝えます。陶芸の勉強ができるところは、大学や指導所もあるし、弟子入りにしても産地の窯元に住み込みで手ほどきを受けるのと、僕の教え方は全然違います。」

 望月は、東京芸大の助手を長く務めていたこともあって、教授たちの手伝いは勉強になったと語る。 「勉強したての自分では経験できないような、お手伝いを数多くさせてもらえました。僕はとくに浅野陽先生と肌が合いまして、いろいろと吸収できたのはありがたかった。浅野先生と肌が合わなくて辛かったという同級生もいますから、先生の姿勢や考え方に共感できて気持ちが通じるというのは重要なことだと思います。」

 自らを振り返って、手伝いを通じて覚えることを重視している望月は、弟子に対しても同様に接するよう務めている。

 「陶芸教室の人は別ですが、プロをめざす人には自分で求めていく姿勢がほしいので、1から10までを指図したりはしません。ある意味では冷たいのかもしれませんが、何もやらない人はそのままだけど、そちらが積極的ならこちらも積極的に接しますよと言うんです。僕の学生時代も、先生からこうしろなんて何もないし、それも自信になるんですよ。」

 浅野陽が学生の望月に言った「大学を出た後まで面倒を見ることなんかできないから、出た後は勝手にやれというのは無責任だ。フォローはするけれども自分で展開するカを身につけろ」という言葉が、望月の指導の原点である。

 「僕はまず、陶芸教室に何回か出入りしてもらいます。初めての方でも自分がやってみたいところだけで構いません。そのときの感触や印象で判断するようにします。その後で経済的なことや時間的なことを相談しながら決めます。授業料は3万円前後ですね。これは勉強をしに来るけじめみたいなものです。焼成費など、ここで実際にかかる経費は僕のほうでもちます。手伝いができるようになったら、その分についてはお礼をします。だから3万円以上の仕事をしたほうが得だよと言うんです。」と笑う望月に、弟子をとることについて開いてみた。 「弟子をとったら、その弟子を養わなければならないというのが普通の発想だと思いますが、そうすると最低限の生活費とかを考えなくてはいけない。今の時代にそこまで面倒をみるというのは、弟子も先生もすごく負担になると思います。僕の場合は弟子をとるというよりも、勉強したいのであれば僕のわかってることはどんどん教えるということで、弟子ではなくて勉強してる人という言い方をしています。」

 これまでに望月のもとを訪れた弟子入り希望者は、圧倒的に20代の女性が多いという。望月のもとに週1回通っている有光志津枝さんは、望月が講師をしている埼玉大学の大学院に在籍している。大学のやきもの同好会が陶歴の始まりだという。現在は望月の工房で、土を作ったり、窯詰め・窯出し、教室の管理とか、釉薬のテスト色見本を作ったりしている。

 将来はプロの陶芸家になりたいという彼女に「最低でも4、5年間、毎日やきものを作り続けられれば、やきもののセンスがあるということになると思います。それがまず第一段階で、才能はその先です」と望月は語る。



                                           (本文:一閑(私)の関連のところを抜粋)




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